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数十年経っても変わらない景色は進化の在り方にメッセージを贈る

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秀直です

嬉しいことに、「コスタリカ、カリフォルニアの旅での経験そして秀直さんの人生観をぜひお話していただきたい。」
と依頼を受け神戸の歴史ある異人館に招かれた。
私のこれまでの人生経験が誰かの心に少しでも触れることが出来、何かの役に立てるならこれほど嬉しく誇りに思えることはない。

講演と交流を持った数時間はその場にいた一人一人の真剣な眼差しに包まれた素晴らしい一時となったのは言うまでもない。
いつの時でも何かを追い求め行動し、貪欲にすべてを吸収しようとする目はこちらも刺激を頂けるものだ。

神戸を辞し向かったのは、両親の故郷で私にとって離れて遠い場所であっても懐かしく心の灯でもある京都府伊根町。
私のルーツでもある土地だ。

日本三景の一つ天橋立を越えさらに北へ進むと舟屋で有名な伊根町に入る。

右手に見える伊根湾を山側に登り進み数キロ。
すると私のルーツの土地伊根町菅野が見えてくる。
父の転勤や成人してからの私自身の生き方による多くの転居により、この歳になっても数えるほどしか訪れていない場所。
にもかかわらず、ここの空気は特別なものだ。

伊根本家には現在病弱な叔母とその叔母を介護する従弟夫婦の奥様が暮らし、ご主人は週末に訪れるという生活を送っている。

一つ年上の従弟は私にとっては本当の兄のように優しく頼りがいのある自慢のしっかり者だ。
今回の訪問も心から喜んでくれてこちらも嬉しい気持ちで一杯になった。

昨年の9月に父を亡くし、叔母の顔が無性に見たくなり数十年も足を向けなかった罪悪感と後悔がほんの少し胸を痛めた。
しかし、皆さんはとびっきりの笑顔で私を迎えてくれ昔話に花が咲いた。

とにかくこの場所は変わらない。
幼少期に祖父のお葬式に訪れた時の風景と何一つ変わらない。
すでに思い出の土地を巡る時期に差し掛かってきた私にして、これほどまでに変わらない場所はない。

ここに立つと子供の頃に吸った空気の味、家の横を流れる小川の水の匂い、田んぼや畑の良質な土の香りが身体全体に染み渡るようだ。
本当に何とも言えない爽やかで神聖なエリアに入り込んだように。

本家の墓の立つ小高い山から見下ろすと周りの山々から囁き声が聞こえてくる。
この風景と流れる空気を忘れてはいけないと。

母親の故郷はさらに山の奥だ。
こちらもまたその姿は変わることがない。
竹林に囲まれた海を見下ろす山の墓地は静寂に包まれ、こちらでもしっかりとした自然そのものの匂いが充満していた。

終わりのない発展はどこまで行くのだろう。
ここで呼吸をしてみれば大切な何かが見えてくる。

病気や自然破壊、それらが起こる前に身体や地球にとってさらには生にとって大事なものとは何だろうと振り返ることは悪くない。
なりふり構わない前進に気づいたとき、香る空気や土や水に触れることを忘れてはならない。
そう感じさせてくれる場所に足を向けてみてはいかがだろうか。

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